アニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」(2020)ネタバレあり長文感想
年の終わりに、大阪ステーションシティシネマにて観てまいりました。
ネタバレ含む感想なのでご注意を。
前半がむちゃくちゃに好きで、これは自分の中でベスト映画になるかも!と思っていたら、中盤の急展開とやりすぎでは?な曇らせ展開でどうも自分の好みから少し逸れてしまい…
100%完璧にはハマりきれなかった、「ん〜〜!!」となる映画でした。良作なのは間違いないですが、なまじ前半が良かっただけに「惜しい…!!」という勝手な感想に。
アニメ表現としてはむっっちゃくちゃに素晴らしいですね。キャラデザも作画もいいし、ジョゼの表情ひとつひとつの可愛いこと!!背景とか海の表現とか一つ一つもむちゃくちゃ綺麗(語彙力)ですし、アニメ作りがすごく丁寧だなと感じた作品です。
BGMとかも鳴って欲しい時に鳴ってくれる感じで、もちろん好みはあるでしょうが、個人的にはこれまで観てきたアニメ映画の中でもダントツで没入できる前半でした。
大阪民であり、なにより事情を抱えたボーイミーツガールが大好きなので。
個人的には大好きなライトノベル・小説の「半分の月がのぼる空」を思い出しもしたんですよね。一見性格に難があって、事情を抱えたヒロインで。
そう言うヒロインって、下手したら初見だと敬遠されがちかもしれないんですが…(また今の時代だと)
今回のジョゼはむっっちゃくちゃ魅力的に感じましたね。だって声も表情も一つ一つが可愛いんだもん!!やっぱりアニメの成せる技ですね。
(ただ、24歳はウッソだろお前!とはなりました)
何気ない景色の一つ一つに表情を輝かせるジョゼ、そんな彼女に惹かれていく恒男(まさお)…そこはボーイミーツガールの文法もしても見ていて非常に気持ちよかったです。
(まさお、って名前はビジュアルに反する違和感はややありましたが…。原作小説がだいぶ前ですからね)
大阪民としては見知った景色が出まくって、そこでもテンションは上がりましたね。
より2人の実在性を感じられたというか。
不吉なジンクス(カップルで乗ったら別れる)HEP FIVEの観覧車に乗って、その後「梅田」のオブジェの上でダウンしてたのは笑ってしまいました。
あと個人的なツボポイントとしては、お笑いコンビ「見取り図」の声優参加ですね。
開幕15秒でモリシ(盛山さん)の声が聞こえてきて吹き出しそうになりました。わかりやすっ!
どうしてもプロの声優陣と比べてしまうと不自然さはありましたが、それでも頑張ってた方じゃないかと。
特にモリシは意外とセリフ量多い役で驚きましたね。
加えて、海とか魚とか虎とか人魚とか……
一つ一つのモチーフ・象徴の描き方も丁寧だったと感じました。
細かく検証した訳ではないので、その辺りの構造とか考察は他の方にお任せします(丸投げ)
ボーイミーツガール好きとしては、涎ダラダラな展開の嫉妬によるすれ違いとか、留学の件を言い出せない恒男…とか、中だるみせずドキドキ見られる展開も良かったですし。
個人的に前半は好みにどストライクで、アニメとしても素晴らしいと感じたので、基本的には見て損はない作品というか、恋愛映画に抵抗なければ見ていただきたい感じです。
では、中盤以降のどこに個人的に違和感を感じたのか。
それは大きく言うと2点です。
【①ジョゼの祖母のあまりに唐突な死】
いやもうマジで前触れもなく唐突に無くなるんですよね。
いきなり葬式の念仏流れ始めますし。
ギャグ時空の死に方なんよ(ノブ)
確かジョゼと恒男の2人が紅葉の下を歩くシーンの後、場面が切り替わって唐突に念仏と葬儀風景が流れ始め、気がついたらもう祖母が亡くなってるんですよね。
これはもう違和感しかなかったというか、あまりに唐突に感じましたね…。そこは正直残念でした。
祖母が生前最後に登場したのって、出かけるジョゼと恒男を見て笑った後、グリコのポーズしたとこですよね?
せめてもうちょっと前触れかなんかを…
祖母も祖母でなかなかいいキャラクターで愛着を持っていたところに、ほんと唐突に何もなく亡くなってしまうんですよね。
しかも、そこからは祖母についてはほぼノータッチですし。
(EDでジョゼが祖母に手を合わせてるくらい)
これはあまりに祖母が舞台装置過ぎるというか、なにか祖母が残すものとか少しでもあっていいんじゃないかと個人的に感じました。
他の部分とかは丁寧に描写してるのに、なんで祖母は雑に死なせたんですかね…?
祖母はメインキャラじゃないですし、ジョゼと恒男がメインなので、裂けるものが少ないというのも分かるんですが。
あまりにも……尺が足りなかったのかしら?
せめて天候の変化(曇る、雨が降る)とかで事前に祖母の死を暗示させるとか……
でも、その描写は後半で別にやっちゃってるんですよね。
だからこそ省かざるを得なかったのかなあ…とも。
この時点で一旦入り込めなくなってしまいました。
【②ライバルヒロインのクソ女ムーブから、雪崩式に起こる悲劇の行き過ぎ】
後半に違和感感じたのは恒男の後輩、舞ですねえ…
いわゆるで、序盤はいい子そうというか、恒男に惚れとるんやろなあ…というのは感じ取れて、どうなるのかなとドキドキしとりました。
恒男のバイト先に来たジョゼに嫉妬されてしまうのも王道。
ただ、この舞がやらかします。
恒男本人の意思も確認せず、一方的な自分の感情だけでジョゼに「恒男を自由にしてあげてくれ」と勝手に主張し、挙句「恒男があなた付き合ってるのは同情」などとのたまう。
いや、ムーブとしては分かるんですよ。
恒男が好きゆえに暴走し、暴言を吐いてしまった。
これで自己嫌悪描写とか後の謝罪とかあれば溜飲は下がります。
ただ、その後の結果が最悪だった。
舞に言われたことを気に病んだジョゼは恒男を拒絶して逃げ、車道に飛び出してしまう。
それを追いかけた恒男は車に撥ねられ、重症を追う…。
やりすぎじゃ!!(曇らせ展開)
誰がここまでやれと言った
結果としては最悪です。
(序盤で踏切を乗り越えようとするジョゼのご無体っぷりとかを描写してるのは、伏線かはわかりませんが上手いと思いました)
もちろんジョゼも悪いんですが、間接的に舞が恒男の事故の原因を作ったようなものでは?
なんというか、客観的に見て結果がシャレになってないんですよね…。
その上、自己嫌悪とか謝罪描写とかもなく、一方的に告白して勝手にスッキリしてるし…。
その辺がぜんぜん整理・共感できず、舞の行動がひたすら「は?」と言う感じでした。
ジョゼを焚き付けて、噛ませ犬に敢えてなろうとしてるところとか、いい部分もあったんですが、いかんせんやらかしたことが酷過ぎて…。
クレーマー気質かもしれないんですが、ジョゼはまだ「ごめん」と恒男に謝っているのに(これだけでも多少の溜飲は下がる)、舞のやらかしについてはお咎めなしというのは、スッキリはしませんでしたね…。
話の作り上仕方ないんですが、「車に撥ねられて生死の境をさまよい、その上後遺症も残るかもしれない」というのは個人的に「やり過ぎ」なんですよね。
アニメだからなんとか話が成立してるかもしれんけど、現実的に考えたらもはや修復不可能なやらかしでは?
後半ジョゼと舞がライバル関係みたいになってるのとかも面白いんですけどね…
どうしても舞の暴言およびそれがもたらしたエグすぎる結果、そして舞への溜飲を下げる機会がなかったのが、どうしても引っかかりました。
…とまあ、不満を言ってしまいましたが、
そこからの後半の展開とかは良かったと思います。
やっぱり告白とキスシーンはいいですわね…。
恒男が告白した時は「よう言うた!それでこそ男や!」ってなりました(?)
恋愛厨なのでそこだけで許せちゃう感はありますし、関係を積み重ねてきてのあのキスはやっぱりカタルシスがありました。また出逢いの衝突と同じ構図なのが憎い。
「俺が管理人でいたい(うろ覚え)」っていい表現ですよね。
“ジョゼ””管理人”という関係性の表し方もニクい。
「ジョゼの自立」を描くのであれば、2人の関係が成就する必要はないし、結ばれるのがいいとも限らない。
いったいどう言う落とし所にするのかなと思いましたが、「自立した上でそれでも一緒になることを選ぶ」というのは、いい落とし所だなと。
結果として2人は結ばれ、恒男も留学に行けることになり。
個人的にあれだけ恒男が夢と言ってた、メキシコの魚と泳ぐシーンは、エンディングで出ないんかい!!とはちょっとなりましたが。
まあ、恒男もジョゼも夢を捨てずに歩み出せたところで終わっていて、そこでEDでサラッと描いてしまうのはどうか、というのがあったのかもしれません。
最後は桜並木を無事にふたりで見られる…というハッピーエンド。
ここの回収も丁寧だなあ…と思いました。
それだけに、要所要所の雑?な部分がどうしても引っかかってしまったというか。
もう少し長い尺ならどうなってたのかな…と思ったりもします。
原作・実写映画をまったく知らずに観たのですが、それぞれで展開が違うみたいですね。
「ジョゼ」の由来である原作とかも読んでみたら、また深まるのかも。
また追ってみたいと思います。
繰り返しになりますがアニメ表現としては一級と思いますので、それだけでも観る価値ありです!
大阪民もぜひぜひ
以上、勢いで書き殴りましたが、ご不快な表現などありましたらご容赦くださいませ。
やはりボーイミーツガールはいいものだ…。
ご覧くださりありがとうございました!m( )m